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マンションの修繕と補修の違い:判断基準と費用差を施工業者が実例解説

「補修工事をお願いしたら修繕が必要と言われた」「見積書に補修・修繕・改修・改良が並んでいるけど、何がどう違うの?」

補修と修繕は目的も規模も費用もまったく別物ですが、言葉だけ見ても区別がつきにくいですよね。業者の提案を受けるとき、違いが分からないままでは、その内容が妥当かどうかを確認する手立てがありません。

補修で対応できる段階を見逃すと、後の工事規模が大きく変わります。足立区・荒川区で40年以上・4,000件超の施工を手掛けてきたタムラ塗装の現場では、早期対応と放置後で工事規模が3〜5倍変わった事例を何度も見てきました。

用語の違いと現場での判断基準を知っておくと、業者の提案を自分なりに確認できるようになります。

この記事でわかること
  • 補修・修繕・改修・改良の定義と違い(比較表あり)
  • 補修・修繕それぞれに分類される工事の具体例
  • 補修か修繕かを見極める3つの判断ポイント
  • 早期対応と放置で費用がどう変わるか(実例2件)
この記事を書いた人
田村 正人(たむら まさと)

タムラ塗装 代表取締役社長 / 職人歴10年 / 一級塗装技能士保有
高校を卒業と共に外壁塗装業界へ。先代(親方)のようにいつも「お客さまに喜んでもらえる会社をつくる」をモットーに、お客様はもちろん、一緒に働く仲間や家族に対して思いやりを持って過ごせる会社を目指す。

まず確認:補修・修繕・改修・改良の違いを表で理解する

現場で職人に指示する

「修繕」「補修」「改修」「改良」は、どれも建物のメンテナンスに関わる言葉ですが、目的も費用感もまったく異なります。

まずは用語の全体像を表で確認してから、個別の説明へ進んでいきましょう。

用語 目的 タイミング 範囲 費用感(目安) 足場の要否
補修 実用上問題ない程度に回復(応急処置) 劣化が見つかり次第、随時 局所的・部分的 数万〜30万円程度 不要なことが多い
修繕 新築時の水準まで完全に回復 長期修繕計画に基づき定期的に(12〜15年周期が目安) 建物全体または広範囲 数百万〜数千万円 必須
改良 新築時水準を超えてグレードアップ 修繕に合わせて実施することが多い 設備・機能の改善部位 修繕費に上乗せ 工事内容による
改修 修繕+改良をまとめて実施 修繕のタイミングに合わせて 修繕と同様 別々に発注するより安くなることも 必須

なお、この費用感はあくまで目安で、劣化の進行度によって工事規模は変わります。

費用の大きな分かれ目は「足場の要否」です。補修は足場なしで対応できることが多く、修繕は足場設置(10万〜30万円程度)が前提になります。

次のセクションで、補修と修繕それぞれの特徴と工事例を詳しく見ていきます。

「補修」とは:損傷箇所を部分的に応急処置する工事

補修の特徴:随時・局所的・費用は数万〜30万円程度

補修は計画的に行うものではなく、点検や目視で劣化・不具合が見つかったとき、その都度対応するものです。

劣化・不具合がなければ、何年も補修をしないで済む場合もあります。

対象範囲は局所的・部分的で、目的は「完全に元通りにする」ことではなく「実用上問題ない程度まで回復する」ことです。

費用は工事の種類によって違いますが、目安として次のとおりです。

  • 外壁ひび割れ補修(軽微、0.3mm未満):5万〜15万円
  • 外壁ひび割れ補修(深刻、0.3mm以上):10万〜30万円
  • タイルの浮き・剥がれ補修(小規模):5万〜15万円
  • 屋上・バルコニー部分的防水補修(10〜20平米):8万〜20万円
  • シーリング打ち替え(部分):10万〜30万円

修繕と比べると費用を抑えやすい一方、「補修で済む状態かどうかを見極める」ことが何より肝心です。

補修で済む段階なのに放置していると、後の修繕費が大きく膨らみます。逆に、補修では対応できない状態なのに様子を見続けると、同じことが起きます。

マンションで補修に分類される主な工事

実際の現場で補修に当たる工事としては、次のようなものがあります。

  • 外壁ひび割れ(クラック)へのシール充填・樹脂注入
  • シーリング(コーキング)の部分打ち換え
  • タイルの浮き・割れの部分補修(エポキシ注入・ピンニング)
  • 屋上・バルコニーの一部防水補修(シート部分張替・塗膜補修)
  • 鉄部(手すり・鉄扉)の錆研磨・防錆処理
  • 排水ドレン周辺の部分補修

ここで少し触れておきたいのが「シーリング工事」の名前の使い分けです。

「部分打ち換え(補修)」と「全面打ち替え(修繕)」は名前が似ていますが、費用・規模がまったく異なります。

見積もりや提案が来たとき、どちらの工事なのかを確認しておきましょう。

補修はおおむね足場なしで対応できるため、工期は1日〜数日、費用は数万円程度が目安です。

補修と修繕で一番差が出るのが、この「規模の違い」なのです。

「修繕」とは:建物全体を新築時の水準に戻す計画工事

修繕の特徴:12〜15年周期・建物全体・数百万〜数千万円規模

修繕のタイミングは、長期修繕計画に基づいて定期的に行うものです。

国土交通省の「長期修繕計画標準様式・ガイドライン」では主要部位の修繕周期が12〜15年とされており、令和3年度の実態調査(878件)でも実際の大規模修繕の約7割が12〜15年周期で行われ、「13年」が最多でした。

範囲は建物全体または広範囲にわたります。

補修の目的が「実用上問題ない程度まで回復する」ことであるのに対し、修繕は「新築時の水準まで完全に戻す」ことを目指します。

なお、修繕の中でも建物全体を対象とした最大規模の計画工事が「大規模修繕」です。外壁・屋上・給排水管・鉄部など複数の部位をまとめて更新するため、費用は数千万円規模になります。

費用感は工事規模によって大きく異なりますが、国土交通省のデータでは、1回目の大規模修繕は4,000〜6,000万円台が最も多くなっています。

2回目は設備更新が重なるためさらに上がる傾向があり、6,000〜8,000万円が最多です。

「12〜15年周期で計画するもの」という前提を知らずにいると、計画外のタイミングで修繕が必要になったとき、費用の準備が追いつかない状況になりかねません。

マンションで修繕に分類される主な工事

修繕に分類される工事は、補修のリストと並べて見ると「部分的か全体か」という違いがよく分かります。

  • 外壁全面塗装(塗膜の全面塗り替え)
  • タイルの全面貼り替え・全面補修(ピンニング全面施工)
  • 屋上・バルコニーの全面防水改修(撤去・新設レベル)
  • シーリングの全面打ち替え工事
  • 給排水管の更新・更生工事
  • 鉄部全面塗装
  • エレベーター更新工事

先ほど例に挙げたシーリング工事でいうと、「部分打ち換え」が補修、「全面打ち替え」が修繕にあたります。

修繕は足場設置が前提になるため、工期は数週間〜数か月、費用は数百万〜数千万円が目安です。

大規模修繕に合わせて改修(修繕+改良)もまとめて行うと、足場代を節約でき、居住者への工事騒音もまとめて済みます。

補修か修繕かを分ける3つの判断ポイント

補修か修繕かの判断は、実際のところ簡単ではありません。私たちが現場で確認しているのは、主に次の3点です。

ポイント1 劣化の範囲:損傷が1〜2か所の局所にとどまっているか、建物全体に広がっているかで判断が変わります。

劣化が局所的で前回大規模修繕から5〜7年程度なら、部分補修が有効です。

同じ箇所を繰り返し補修しても再発するようなら、建物全体の劣化が進んでいる可能性があります。一度、全体の点検を考えてみるタイミングかもしれません。

ポイント2 劣化の深刻度:外壁のひび割れ(クラック)でいうと、幅0.3mm未満のヘアクラックは緊急性が低く、すぐに動かなくても様子を見られます。一方、0.3mm以上の構造クラックは早めの補修が必要です。

この0.3mmという数値は国土交通省「住宅紛争処理の技術的基準」でも「一定程度の瑕疵の可能性がある」とされる境界線です。

屋上やバルコニーに「ふくれ」や「ひび割れ」が見られる場合は、防水層を全面的に撤去・新設しなければならない状態に差し掛かっているサインかもしれません。

ポイント3 緊急性と費用の中長期バランス:今すぐ補修しないと雨漏りリスクがある状況なら、緊急補修が先です。

「補修を繰り返してもすぐ再発する」という状況なら、修繕の方がトータルで安くなる場合があります。

なお、雨漏りが起きているときは修繕が必要なサインの一つです。

雨漏りの費用負担・初動・原因については「マンションで雨漏りが起きたら」の記事でまとめています。

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実例で見る、補修段階と修繕段階の分かれ目

ここまで、補修か修繕かを分ける判断ポイントを見てきました。

ただ、実際の現場では「どこまでなら補修で済み、どこから修繕を考えるべきか」が一番迷いやすいところです。

マンション・集合住宅の場合、補修だけで完結するケースはそれほど多くありません。劣化が部分的に見えても、調査すると修繕が必要な範囲まで進んでいることがほとんどです。

ここでは「早い段階で動いた修繕」と「深刻化してからの修繕」の実例を見てみます。

なお、ケース1はマンションではなく別の建物の事例ですが、修繕の判断タイミングと費用の関係を理解する参考としてご覧ください。

ケース1:荒川区の建物(劣化が局所にとどまっていた例)

屋上の防水シートが切れはじめ、外壁に染みが出てきたことをきっかけにご依頼をいただいた事例です。

症状は出ていましたが、劣化はまだ屋上と一部外壁を中心とした範囲にとどまっていました。

施工内容は、屋上の通気シートをすべて撤去してウレタン防水通気緩衝工法で新設し、外壁のクラックと爆裂を補修してから塗装。目地・開口部のシーリングも撤去打ち替えで対応しました。

費用は250〜300万円、工期は25日間で完了しました。

ケース2:足立区マンション(建物全体の修繕が必要になった例)

築50年を超え、外壁のひび割れが多数発生し、雨漏りも起きている状態でご依頼をいただいた事例です。

この段階になると、ひび割れ部分だけを埋める補修では足りません。

建物全体の高圧洗浄・タイル打診調査から始まり、浮きや割れ箇所の図面化を経てタイルの張り替え・ピンニング工事を実施。シーリングの全面撤去打ち替え(止水処理)、外壁全面塗装(5工程)、付帯部塗装と、建物全体を対象にした修繕になりました。

費用は700〜1,400万円、工期は92日間です。

2つの違いは、単に「早いか遅いか」だけではありません。

劣化が局所にとどまっているうちに動けるか、雨漏りやタイルの浮きが広がり建物全体の調査・修繕が必要な状態になってからか。ここが、費用と工期の分かれ目です。

この2件だけですべての物件を単純比較することはできませんが、早い段階で対処した場合と深刻化してから修繕した場合は金額に差が出ることがあります。

費用だけでなく、工期の差は居住者への影響にもつながります。マンションのオーナーとしては、「まだ補修で済むのか、修繕を考える段階なのか」を早めに確認しておきたいところです。

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大規模修繕を先送りするリスクについては、下記の記事で詳しく解説しています。

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まとめ:補修か修繕か、判断に迷ったらまず現地を見てもらおう

補修と修繕は目的・範囲・費用がまったく違い、対応のタイミングによって後の工事規模が大きく変わります。

  • 補修は局所的な部分対応、修繕は建物全体を新築時水準に戻す計画工事
  • 判断の軸は劣化の範囲・深刻度・緊急性の3点
  • ひび割れ0.3mm以上・防水層のふくれは早期対応のサイン
  • 補修を繰り返すとトータルで修繕より高くなることもある
  • 放置すると工事規模が3〜5倍に変わることがある(実例2件あり)

業者から「修繕が必要です」と言われたとき、「なぜ補修では対応できないのか」と聞けるかどうかは、判断の軸を持っているかどうかで変わってきます。ここまでで、その軸は少し整理できたのではないでしょうか。

実際にどちらかを決めるには、建物を見ないと判断できません。劣化の範囲や深刻度は現場でしか分からないため、「補修で様子を見るか、修繕に動くか」は専門家の目で確認してから進めるのが確実です。

足立区・荒川区で40年以上・4,000件超の外壁・防水・シーリング工事を手掛けてきたタムラ塗装では、補修か修繕かの判断も現地確認の上でお伝えしています。

迷っているときは、まずお気軽にご相談ください。

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